「Konbini」が独り歩きを始めている
このおにぎりの写真をご覧ください。カタール・ドーハで撮りました。
パッケージをよく見ると、「Konbini」と書いてありますよね。日本語の「コンビニ」が、そのままブランド名になっているんです。
しかもこれ、日本企業の海外展開ではありません。現地で展開しているSushi Millionという企業のもの。8.75QAR(約390円)と、日本のコンビニおにぎりと比べると価格は高めですが、「Food to go」コーナーにしっかり棚を確保しています。
「Konbini」という言葉、実は海外でじわじわ独り歩きを始めています。いまや海外の記事にも登場するし、パリには「Konbini」という名前のメディア企業まである。訪日観光客の影響もあって、もはや「訳す必要のない日本語」の仲間入りをしつつあるわけですね。
ただ、ここで面白いのは、広がりの量よりも「意味のズレ」の方。
私たちにとってコンビニは、5分で弁当を買って次の予定に向かう場所です。日常すぎて、わざわざ語るようなものでもありません。とてもありがたいけど、ときめきはない(コンビニ関係者の方、すみません!)。
ところが海外では、まったく違う受け取られ方をしています。カタールの「Konbini」が意味しているのは、日本のコンビニの運営システムというより、「日本風の洗練されたgrab-and-go」というスタイル記号です。清潔感、整然さ、手軽だけどちゃんとしている感じ。価値が置かれているのは、そちらの方なんです。
要するに、海を渡ったのは「仕組み」ではなく「スタイル」だったということ。
これは私たち食品業界の人間にとって、けっこう大事な話だと思います。日本の食品やサービスが海外に出るとき、送り手はどうしても「仕組み」や「品質」を届けたいと考えますよね。でも受け取る側が惹かれているのは、もっと別のもの、「価値観」の方だったりします。
そして、「いや、本家はそういうものじゃないんだけど」と言ったところで、あまり意味がありません。価値は、届くたびに書き換わるものだからです。自社が届けたいものと、受け手が感じ取っているもの。そのズレに気づくことが、海外展開では重要な一歩と言えます。