100年以上旅をしてきた料理
このサモア料理をご覧ください。一皿から学べることが、本当に多いんです。
オークランド郊外のオタラマーケットで撮った一枚。太平洋諸島系コミュニティが集う土曜朝限定の青空市場で、サモア・トンガ・マオリの家庭料理が並びます。地元の人いわく「治安はちょっと注意ね」とのことでしたが、途中でリアルなハカ(マオリの伝統舞踊)を見ることもでき、活気にあふれていました。
ここで私が食べたのが、サパスイ(Sapasui)という料理です。春雨炒めにステーキと玉ねぎ、添えのタロイモはココナッツミルクで仕上げてあります。プラスチック容器に山盛りで15ドル(約1,500円)。何気ない一皿ですが、実はすごい旅をしてきた料理なんです。ざっくり言えば、中国 → 米国 → サモア → ニュージーランドと、100年以上かけて変化を繰り返してきた・・・壮大な旅路ですね。
「チャプスイ」という名前は、広東語の「雑碎」(寄せ集めの意)に由来するとされます。米国の中華移民の文脈でも広く知られる料理で、20世紀初頭にサモアへ伝わり現地化、戦後は移民とともにニュージーランドへ渡り、いまでは太平洋諸島系の家庭料理に。100年経てば、それはもう完全に「その土地の料理」なのです。
添えのタロイモは、ニューギニア方面で7,000年以上前から栽培されてきた、太平洋世界の主食。中華のしょうゆ味は日本人にもなじむのに、そこへココナッツの甘い香りが重なる瞬間、脳がバグります。「これは未知の経験だ!」って。
この100年ジャーニーは、いま世界を駆け巡る和食の「未来」にも重ねられますよね。Sushi、Ramen、Bento、Katsu Curry、Udon、Matcha…あらゆる日本食が世界的にブームですが、日本人なら「えっ、それは…」となる亜流やクリエイティブ系もたくさん。海外では韓国料理と日本料理が同じ文脈で語られることも多く、現地ではもう普通の選択肢です。
見逃せないのは、世界に出ていった日本食が、現地で姿を変えてふたたび日本へ「里帰り」してくる動きです。カリフォルニアロールなどアボカドや辛味マヨのクリエイティブ寿司は、いまや日本の回転寿司でも並んでいますよね。10年20年すれば、東南アジアやアフリカで独自進化した「現地の和食」が、逆輸入される時代もくるでしょう。
ローカライズされ、別の文化と融合し、変化を繰り返す。この背景にある「文化の違い」を構造的に読み解けると、長期的な海外展開や製品開発に応用が利きます。100年の旅は、いまも棚の上で続いています。